千利休が思うもてなしの心に、骨董品買取の極意を垣間見る
2014/2/28 18:19
森口という所に、一人の侘び茶人がいた。利休の知人であった。
茶を点てるから、いつなりと来て欲しい。それならば、伺うと、約束をかわしていた。
ある冬のころ、大阪から京都にのぼる道すがら、利休はふと、その侘びた茶人を訪ねてみようと思い立ち、夜更けにその家を訪問した。亭主は喜んで利休を迎え入れた。
その住まいは、たいそう侘びていて、利休の心にかなった。
少し経つと、茶室の窓の外に人音がするので、見ると、亭主が、行灯に竹竿を持ち添えて、露地に出て柚の木の下に行灯をおろし、竿で柚を二つばかりもいで、内に入った。
『さてはこれを調菜の一種にする気か』
と、侘びたもてなしを大変面白く思っていると、果たして柚味噌にして出した。ところが酒一献を過ぎたころ、
「これは大阪からの到来物ですが」といって、ふくらかな肉餅がでた。
『さては、昨夜、自分の来るのを知らせた者がいて、肴もととのえていたのか。初めにわざとらしく、柚などもいだのは、作り事であったか』とにわかに興ざめ、酒の途中で、『京都に用事があるから失礼いたす』といって、いくら引き止めても聞かずに、上洛してしまった。
[茶話指月集]
侘びの茶事を催すに、例え有り合わせの物でも、相応しくないものは出さぬがよい、これは、わざとらしい作為を利休が戒めた話である。
肉餅とは蒲鉾のことで、到来の蒲鉾を出されて興ざめて帰るなどとは、俗世界の常識では考えられないことなので、これを利休の奇行と見るのだが実は、奇行でもなんでもない。
ただ食いさえすればよいという常識の方がよっぽど変である。茶道に徹した利休として、このくらいの行動はあったに違いない。
この逸話は、利休のものとして、最も名高い。
[茶道の逸話]
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